吸わせきるトイレでは
と言い切っています。
なぜそう言えるのか。その理由は、
です。
そして国は、決めたその方針に基づく計画の策定を、地方公共団体に求めています。
方針決めました! これに沿った計画を求めます。
方針は、わかりました。
その方針、たとえば、こんな風に書かれています
「災害時には、し尿をごみとして託せる」と国が方針を決めた。
それについて関連する「国の文書」の一部を、例としてを挙げましょう。
国〔内閣府等〕,公共機関,地方公共団体等は,(中略),住民に対し,(中略),以下の事項について普及啓発を図るものとする。
・「最低3日間,推奨1週間」分の食料,飲料水,携帯トイレ・簡易トイレ,トイレットペーパー等の備蓄,……
これは「防災基本計画」という文書の一部です。
防災基本計画は「政府の防災対策の基本的な計画(1)」であり、その中に「地域防災計画において重点をおくべき事項について、基本的な方針を示し(1)」ている文書です。
ここで言われる「携帯トイレ・簡易トイレ」は「吸わせるトイレ」に必要な資材(セットされた商品も含む)のことです。
誰に向けたメッセージなの?
要約すると、こんな感じでしょうか。
「最低3日間、できれば1週間分の携帯トイレや簡易トイレを備えましょう!」って、国民の皆さんに広く伝えることに決めました。
我々国もやりますし、市町村さんにもそうしてもらうってことで(よろしく)!
方針は、わかりました。
「国」の台詞、少し意訳が過ぎるところもありますが、概ね意味するところは、この通りかと思います。
これは、誰に向けたメッセージなの?
地方自治体ですね
「○○をすることにする」と行動の予定を示した国(政府)の計画であり、市町村が計画する際に「参照すべき」とする国(政府)の方針です。メッセージという意味では、相手は国およびその関係機関、地方公共団体(都道府県や市町村)ということでしょう。
この防災基本計画は広く公開され、誰でも自由に読むことができます。公開することで、このメッセージ(やり取り)を「見せている」という意味では、私たち国民もその相手に含まれるのかもしれません。
ウーン……でもなんか”蚊帳の外”って感じ。「簡易トイレを備えましょう」って国や市役所から言われた記憶も……そこまでは……
ストレートに、もっとハッキリ言えばいいのに……
ハッキリ言ってくれない……少々面倒な話
災害時には、し尿をごみとして託せますよ
国は、こうハッキリとは言いません。
災害時には、し尿をごみとして託せるものとする
という「法律」もありません。
あるのは、
携帯トイレ・簡易トイレを、国民の皆さんに備えてもらう
という「方針」だけです。
なぜ国は、ハッキリとはとは言わないのか。それにはしっかりとした理由があります。
生活ごみの「処理」の責任は、市町村にある
国がハッキリとは言わない理由。
それは、国が「それを言う立場にはない」からです。
一般廃棄物(2)の「処理」の責任は市町村にある。国民(3)はそれに協力し、都道府県と国はそれを援助する。
と、法律で定められています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成29年6月16日 改正)
(国民の責務)
第二条の四 国民は、(中略)廃棄物の減量その他その適正な処理に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。(国及び地方公共団体の責務)
第四条 市町村は、その区域内における(中略)一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努め(中略)なければならない。2 都道府県は、市町村に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることに努めるとともに、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の(中略)適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。
3 国は、(中略)市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えること並びに広域的な見地からの調整を行うことに努めなければならない。
一般廃棄物とは、産業廃棄物以外のごみ、平たく言えば、私たちが暮らしの中で生み出す「生活ごみ」のことです。そして「ふん尿(し尿)」も「廃棄物」に含まれ(4)ます。
まとめると、
と言えます。
つまり、もし「災害時には、し尿をごみとして託せる」と言うべき人がいるとすれば、それは
はい、私たち市町村の職員です。
ということになるのです。
(4) 廃棄物は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第二条において「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの」と定義される。
「ごみとしてのし尿処理」を明言している市町村がある
災害時には、し尿をごみとして託せますよ
そうハッキリと、住民に伝えている市町村をご紹介します。
紹介するのはインターネット検索による表示結果が上位の市町村です。「大規模災害時のごみの出し方」等の語による検索で表示され、以下の条件を満たすものから順に選びました。(2020年6月現在)
- 自治体の公式ウェブサイトである
- 住民への周知を目的としている
- 「災害時には、し尿をごみとして託せます」と同義の文章を含む
「携帯トイレ」は(ごみとして)出せるようになります。
地震などの大規模災害発生後は、ごみ処理施設の点検・安全確保のために、3日間はごみが出せません。4日目からは、「生ごみ」、「衛生用品」、「携帯トイレ」、「紙おむつ」は出せるようになります。災害の規模や被害状況により、ごみが出せるようになるまでの日数は異なりますのでご注意ください。
使用済非常用トイレは「可燃ごみ」に出します。
- し尿は非常用トイレなど凝固剤を使用し適切に処理してください。
- 使用済非常用トイレは「可燃ごみ」に出します。災害時に備えて非常用トイレを用意しておきましょう。
使用済みの携帯トイレは「燃えるごみ」にお出しください。
自宅のトイレが使用できない場合は、携帯トイレ(便袋)や仮設トイレを使用してください。使用済みの携帯トイレ(便袋)は「燃えるごみ」にお出しください。
「明言している」とは言いがたい市町村もある
紹介した例のように「災害時には、し尿をごみとして託せます」と明言している市町村は、他にもあります。
同時に、そうとは言いがたい市町村もまた、あります。紹介に際しての”ネット検索”の条件とした、以下の三つをの満足をもって「明言」としたとき、それを確認できない市町村もありました。
- 自治体の公式ウェブサイトである
- 住民への周知を目的としている
- 「災害時には、し尿をごみとして託せます」と同義の文章を含む
しかし、これは私が勝手に設定した条件です。この三つを満足しないからと言って「明言していない」とは言い切れません。別の方法で「災害時には、し尿をごみとして託せます」と住民に伝えている可能性はいくらでもあります。
明言しない市町村は、どうするのか
もし明言していないとすれば、どうするのでしょうか。
今、考えている
ひとつ考えられるのは「今、みんなで考えて、方法を検討している」という可能性です。防災基本計画は、市町村などの地方自治体にその方針を踏まえて「地域防災計画」を立てることを求めています。
方針決めました! これに沿った計画を求めます。
方針は、わかりました。
しかし、全国で1,700を超える市町村がそれぞれに抱える事情は、全く異なります。示された方針に基づき、その事情に合わせた計画を鋭意立案するも、その過程で、思いのほか多くの時間を要することもあるかもしれません。
独自の方針を選ぶ
また方針に法的拘束力はありません。方針に沿う、その程度は、市町村により主体的に判断されるものです。地方自治体は国の下部組織ではありません。市町村の抱える事情に合った、より妥当性の高い「独自の方針」を選んでいるかもしれません。
「どうするのか」は、ハッキリさせたい
明言の有無と「し尿のごみとしての受け入れ」の可否に絶対的な関連性はなく、明言しないことが「し尿をごみとして受け入れないこと」を意味する訳ではありません。
でも、言ってくれないとわからないよ……
住民なら、そう思いますよね。
繰り返しますが、市町村の方針は市町村が決めることです。市長を代表とする行政のみではなく、議員を代表とする住民も合わせて自治体、つまり市町村です。住民は、待つだけでなく、自ら行動を起こすこともできるのです。
まずは、きいてみる
もし「よくわからない」「ハッキリしない」ことがあれば、まずはきいてみましょう。役所(役場)に電話してみるのが一番です。
「総合窓口」へ電話することをオススメします。
納得できなければ話し合ってみる
役所(行政)の回答に、場合によっては納得できないこともあるでしょう。その時は話し合ってみましょう。その話し合いの場所こそが「議会」です。その議会で市長と話し合う代表が「議員」です。議員は特別な存在ではありません。住民一人ひとりに代わって話し合う、住民の代表です。
国民には「求める権利」がある、と考えてみた
吸わせきるトイレでは
と言い切っています。
なぜそう言えるのか。その理由は、
です、と冒頭で書きました。
しかし、
災害時には、し尿をごみとして託せますよ
そう明言しているとは言いがたい市町村もある中で、それでも「災害時には、し尿をごみとして託せる」と、あえて言い切るのか?
答えは、
イエス!
です。
私たちには「求める権利」がある
私たちには、
と、考えてみました。
なぜそう言えるのか。その理由は、
であり、私たちは、
です。
国民には、国が決めた方針に沿うことを「求める権利」がある、と思いたい。もしもその権利が認められないとすれば、方針は方針としての体をなさず、論理が破綻します。逆に言えば、その方針が国の方針である以上、その国の国民が、その方針に沿うことを求める権利を有することは必然、と言えます。
ということは、その正しさを明確にすべき命題は、たった一つ。
これだけです。
そこで、こう私は決めました。
「災害時には、し尿をごみとして託せる」ことが国の方針であることを証明しよう!
証明できていると思ったら、「話し合い」に使ってください。
以下、「災害時には、し尿をごみとして託せる」ことが国の方針である、と証明する過程が続きます。
それを読んで
たしかに、国の方針と言える
と納得できたら、
私たちには、その方針に沿うことを「求める権利」がある
と思ったら、ぜひこれを使って、
「話し合い」にチャレンジしてみてください。
「災害時には、し尿をごみとして託せる」ことは国の方針である
冒頭に紹介した「防災基本計画」のとおり、国は「吸わせきるトイレの備蓄を啓発する」という計画をつくりました。備蓄を啓発するには、そのもの、つまり吸わせきるトイレの活用を前提とする必要があります。
吸わせきるトイレは、その概念の成立において、運搬と、焼却または埋め立て処分を含む「ごみとしてのし尿処理」を前提にしています。ゆえに、吸わせきるトイレの活用を前提とする計画には「ごみとしてのし尿処理」が含まれることが必然であり、実際にそれを含んでいます。
合わせて国は、その方針に沿った計画の策定を、地方公共団体に求めています。
3つが正しいことを示せばいい
まとめると、
- 国の方針と計画は、吸わせきるトイレの活用を前提とする
- その方針と計画には「ごみとしてのし尿処理」が含まれる
- 市町村は、国の方針に基づく「ごみとしてのし尿処理」の計画を求められている
と、なります。
この3つが正しいことを示せば「災害時には、し尿をごみとして託せる」ことは国の方針であると、証明できたことになります。
各種指針から関連部分を引用する「根拠の提示」
1~3. の命題が、すべて正しいことを立証します。
国の各種指針に、3つの命題それぞれが正しいと言える根拠となり得る記載があります。その箇所を引用し、提示します。
「吸わせきるトイレは必要不可欠である」と行政目線で証明する「思考実験」
「ここに、こう書かれている」と根拠を示すことはできました。でも、それだけだと物足りない……そんな不足感があります。
なんだか、面白くないんです。
結局、吸わせきるトイレの活用を前提にしていることがすべて
「災害時には、し尿をごみとして託せる」ことが国の方針である、と証明するには、実は2. のみの立証でも十分と言えます。
吸わせきるトイレは、その概念の成立において「ごみとしてのし尿処理」を前提にしています。つまり2. は1. の必要条件であり、すなわち「1. が正しいときは、2. も正しい」という関係にある。
これが論理の起点、なのです。
国の人になりきって、想像してみる
判断には、そこに至る過程があります。
この「過程」を理解することには大きな価値がある、と考えました。思考実験とは、その過程を「頭の中で、想像しながらなぞってみる」こと。なぞることを「トレース(追跡)」と言います。トレースの第一段階として「吸わせきるトイレの活用の前提」を判断した理由を考え、こう仮定します。
「吸わせきるトイレは、災害時のし尿処理に必要不可欠だ」と結論づけた人が(きっと)いた。必要不可欠だから、その活用を前提とせざるを得ず、だから前提とする、という理屈です。
トレースするのは、この結論づけた人の思考過程です。この人(官僚)になりきって「吸わせきるトイレは、災害時のし尿処理に必要不可欠である」と証明する思考実験を行います。