災害など断水で水洗トイレが使えずに困っている、または「困るかもしれない」と不安を感じているあなた。
災害時のトイレには、この方法があります。
このサイトの内容を漫画にしました
具体的にはこういうことです。
- 袋の中に用を足し
- 猫砂、紙おむつ、凝固剤などの「吸わせるもの」におしっこやうんちの水気を吸わせきる
- お住まいの市町村が指定する方法で「ごみ」として出す
災害などの断水時には、トイレの選択肢として水で流す代わりに、ごみとして出す(収集の人に託す)という方法があります。
飲んで食べて、我慢することなく出す。健やかな身体には、食事とおなじく排せつも大切です。災害トイレの選択肢「水気を吸わせきって、ごみに出す」を、ぜひ知って覚えてください。
吸わせきるトイレと覚えてください。
よろしくお願いします。
これだけ読めば大丈夫! いますぐできる「吸わせきるトイレ」
吸わせきるトイレに必要な「最小限の情報」をまとめました。
これだけ読めば、いますぐできます!
- 災害トイレはごみにも出せる、ただし水気は吸わせきる
- おしっこうんちの水気をすべて、袋の中で吸わせきる
- 空気抜きつつ袋を結び、「トイレのごみ」と書いて出す
それでは順に説明します。
ごみにも出せる(収集の人に託せる)
大規模災害などの非常時においては、し尿(うんちやおしっこ)をごみとして出すことができます。ごみとして出す。すなわち、収集の人に託して、運んでもらう、という方法です。
なるほど! 収集の人に。
収集の人に託され、運ばれた「し尿ごみ」は、各市町村ごとの決まりにしたがって処理されます。「災害時における、ごみとしてのし尿処理」は、国が決めた方針です。
へぇー。国の方針。
具体的な「ごみとしての出し方」や運搬および処理の方法は、自治体によって異なります。
詳しくはお住まいの市町村に確認してみてくださいね。
ポイントは「水気を吸わせきる」こと
うんちやおしっこには水気があります。たぷたぷ、びちょびちょしているので、そのままでは託せません。
この水気をなくす、すなわち吸わせきることができれば、ごみとして出せる(託せる)のです。
うんちやおしっこの水気を「吸わせるもの」にしっかりと吸わせきって、収集の人に託しましょう。
「吸わせるもの」を準備する
「吸わせるもの」を準備しましょう。
次に掲げる3つのポイントを参考に、家の中、身のまわりにあるものから「吸わせるもの」を探します。
- まずは「水分を吸いとるためのもの」を探す
- さらに「結果として吸いそうなもの」も探してみる
- 大きかったら、小さくする
1.まずは「水分を吸いとるためのもの」を探す
「水分を吸いとるためのもの」の方が「結果として吸水性があるもの」よりも、吸わせきるのに向いています。
「水分を吸いとるためのもの」と聞いてどんなものが思い浮かびますか?
おむつ……とか?
そうそう! 「排せつ用品」の多く、たとえば、おむつ、尿とりパッド、ペットシート、猫砂なども「水分を吸いとるためのもの」と言えますね。
排せつ用品かぁ。赤ちゃんも猫もいない……。「水分を吸いとるためのもの」は家にはなさそうだなぁ……
大丈夫! ならば次を探しましょう。
2.さらに「結果として吸うもの」も探してみる
もし「水分を吸いとるためのもの」がない、あるいは少ないときには「結果として吸水性がありそうなもの、吸いそうなもの」も探します。
「結果として吸いそうなもの」、だったらどうですか?
あ、それならありそう! 新聞紙とか……よく聞くよね。
3.大きかったら小さくする
「水分を吸いとるためのもの」の中でかたまりのひとつずつがより小さくて細かいものは「吸わせきりやすい」と言えます。小さくて細かい方が、溜まっているおしっこあとから入れる、うんちにあとからふりかける、などの「あとから吸わせ」ができるからです。
「つぶ」や「こな」的なヤツってこと?
そう、粒状や粉状のものです! 猫砂や、携帯トイレとして使われる凝固剤などがそうですね。
でも、私が見つけたの新聞紙だし……
大丈夫! 大きかったら、小さくすればいいんです。
「吸いとるためのもの」でも「結果として吸いそうなもの」でも、もし大きければ「ちぎる」などして、
ことで「吸わせきりやすく」できます。
新聞紙も細かくちぎれば、なお良いってことね!
あっ! ってことは……粉状のものなら何でもいいってことかなぁ? たとえば……小麦粉※とか!
「吸わせきりやすい」と言える粒や粉は、そもそも「水分を吸いとるためのもの」であることが前提です。すべての粉の吸水性が高いと限りませんので、注意が必要です。
袋の中に用を足し、水気を吸わせきって、口を結ぶ
十分な大きさの袋の中に用を足します。準備した「吸わせるもの」にうんちやおしっこの水気を吸わせきります。中の空気を抜いて、袋の口を結びます。
口を結ぶ前に、
ことが大切です。
- ごみの容量を減らす
- 袋の破裂を防ぐ
これがねらいです。
口を結んだ袋を、さらに大きな袋に入れるなど、お住まいの市町村が指定する「ごみとしての出し方」にしたがって、託します。
「これだけ読めば大丈夫! いますぐできる吸わせきるトイレ」は以上です。
収集される日まで、しばらく家に居させてください。
心のハードルを下げる、吸わせきるトイレの工夫
ちょっと待って。袋の中……にするんだよね? なんか抵抗があるなぁ……。「家に置いておく」とか「ごみとして出す」ってのも、ちょっと……ねぇ……
なるほど、吸わせきるトイレに抵抗があるんですね。
できるだけ心のハードルを下げる工夫、ありますよ。
いつものトイレで「いつも通り」に近づける
吸わせきるために袋の中に用をたすことは、どこでもできます。袋を床(地面)に広げて、その上にしゃがめばいいからです。
でも、うんちやおしっこはできればトイレでしたいですよね。水が出ない、あるいは流せない状態でも、トイレ空間が安全ならばそこで便器は使えます。
便器に袋を被せれば、いつものように便器に座って用を足すことができます。被せた袋の中で上手く吸わせきるには「袋を二重にする」や「角を使って底をつくる」などのコツがあります。
ダンボールなどでできたトイレは便器の代わり
もしも「トイレ空間が危険」など次のような状況がある時は、ダンボール製の簡易トイレや、主に介護用として使われるポータブルトイレなど「便器の代わり」になるものも活用できます。
便器の代わりが役立つのは次のような場合です。
- トイレ空間が危険(ガラスが割れている、天井が落ちかけている)
- 便器の数が足りない
- 今あるトイレが使いづらい人(要配慮者)がいる
気になるニオイは「袋」で防ぐ
吸わせきったものは、収集が始まるまで家で保管しておくことになります。そうなれば気になるのはやっぱりニオイ。不快なニオイを防いでくれる「防臭袋」という商品があります。
防臭袋はネットショップを中心に販売されています。
「託す」という言葉に託す願い
吸わせきるトイレ、だいたいわかったよ! やれそうな気がしてきた。
それは何より!
でもね、言いにくんだけど……「託す」ってわかりづらい。ストーレートに「捨てる」って言えばいいのに……
正直にありがとう。その通り、わかりづらいんです。
あえて「捨てる」と言わない理由
うんちやおしっこを「ごみ」として収集し、運搬する。仕事とはいえ、その負担の大きさは想像に余りあります。収集運搬の作業に従事する人、すなわち「託される人」の陰日向のない活躍が、そこにはあるのです。
ごみ処理全般についても言えることですが、ルールはもちろん、関わる全ての人の心がけ、によってその仕組みは支えられます。
「託す私たち」は、心配りで応えたい。
託される人と託す人、またはその両者同士のコミュニケーションにおいて、この「あり方」が共有されたい。わかりづらさを承知してでもその「願い」を優先し、「捨てる」ではなくあえて「託す」と表現しています。
なるほど……心配りか。
「捨てる」は、その時点で責任を手放しがち。「託す」なら、最後まで責任を感じ続けられる。自戒も含め、そう感じています。
分けて、書いて、託す
託す僕らができる、具体的な行動って何かある?
ありますよ! 「分別」と「中身の明記」です。
し尿ごみは、吸わせきって出すことが、もっとも大切な心配りであることは言うまでもありません。それでも水気を含んでいることから、託された「し尿ごみ」は、軽トラックなどのいわゆる「平積み車」で運搬することが理想とされています。しかし、現実には「パッカー車」と呼ばれる機械式収集車で回収される。多くの場合、そう想定されています。
パッカー車によってごみが圧縮されるとき、場合によっては中身が飛び出すおそれもあります。
中身がわかれば警戒できる。「し尿ごみ」って大きく書いてあるとすごく助かります。
と収集運搬の作業員の方の一人に教えてもらいました。
そこで、
- ほかのごみとは分ける(分別)
- できるだけ大きく「し尿ごみ」と書く(中身の明記)
この二つのことは、自治体の指定する方法に依らず(つまり求められてなくても)、託される人への心配りの具体的な行動として、ぜひおこなってください。
私からの提案かつお願いです。
分けて、書いて、託してください。
どんな時も「大丈夫!」と言えること
吸わせきるトイレを知ればもう大丈夫! サイトのタイトルも遠慮せずに「災害トイレは吸わせきるトイレ」って言い切っちゃってよ!
実はね、吸わせきるトイレにも課題があるんです。
そっか、課題があるんだ……
実は、吸わせきるトイレも万全ではない
平時のし尿は、浄化処理して海や川に放流する。これが一般的です。
SKiTが前提とする、し尿(うんちやおしっこ)を「ごみ」として扱う──具体的には、人の手で運び、焼却するまたは埋め立てる──ことは、理想的とは言いがたい。だから災害などの非常時にのみ特別に認められ※2、必要に応じて選ばれます。「し尿ごみ」の量は、できれば小さく押さえたい。大きくなることが歓迎されるものでは、断じてないのです。
「心のハードル」もあります。いくら工夫をしても嫌なものは嫌でしょう。勧められても選ばない人もいる。心の自由は、尊重されるべきものです。
私やっぱり、吸わせきるトイレは無理かも……
このように、吸わせきるトイレも万全ではなく、「災害トイレのすべてを吸わせきるトイレにすればいい」というわけにはいかないのです。
少なくとも私は「そうすべき」とは考えていません。
私ね、お風呂の残り湯は、抜かずに溜めておくようにしているの。だから大丈夫よ、その水で流すから。
吸わせきるトイレは状況に左右されない
断水時の排せつ方法は、いろいろあります。他のトイレを探す、その辺(屋外)でする、お風呂の残り湯などの水で流す……等々。これらはどれも思い付きやすく、過去の災害でも多くの方が選びました。
「思い付いた中で自分が好きな方法を選んでください」
そんなこと、わざわざ言われるまでもなく、誰もが自然にそうします。何を選ぶかは、その人の自由です。それができる限りにおいては、何も困ることはありません。
しかし、これら「よく選ばれる災害トイレの方法」には、見落としがちで、気づきづらい弱点があります。仮設トイレがまだ来ない、外は極寒で大雨、「下水を流さないで」と通知された……など。選びたくても選べない、という状況は起き得るのです。
「水を流してはダメ」って言われることがあるんだ……知らなかった。
そんな行き詰まったときでも、吸わせきるトイレだけは周りの状況に左右されません。吸わせきるトイレは、どんな時でも選ぶことができる、つまり「大丈夫!」と言える、唯一の切り札なのです。
でも、吸わせきるトイレは思い付きづらい
「吸わせきるトイレを覚えて、いざという時に思い出せるようになって欲しい……」
私が願っているのは、ただこれだけです。
繰り返しますが、思い出した上で選ぶのも選ばないのも、あなたの自由です。もし嫌なら、無理して選ぶ必要はありません。
どうして、そこまで……
思い付かなくて選べなかった人をたくさん知っているからです。
選べる選択肢がなく行き詰まる。これほどの不自由はありません。排せつは我慢ができない。だから他でもない「トイレが不自由であることの辛さ」は誰もが想像できることでしょう。
ところが残念なことに、
たとえ行き詰まった状況であっても、多くの人は「吸わせきる」や「ごみとして出す」を、排せつ方法としては思い浮かべない。そのことが過去の結果や調査からわかっています。
「思い出せる」だけでいい
選べなかった人は、思い付かなかっただけです。
だから、
それだけでいいんです。
知って、覚えて、思い出せるようになる。そのために支払う代償はほんのわずか。「吸わせきれば、託せる」とそのまま覚えるだけです。
いつか、断水で流せなくなったとき、他にトイレが見つからなかったとき、あなたはきっとこう言って、焦る家族を安心させられるでしょう。
「大丈夫! 吸わせきれば、ごみに出せる(託せる)」
と。
「思い出せること」が、あなたとあなたの大切な人を守る。その可能性は十分にあり得ます。
吸わせきるトイレは、いざという時の唯一の切り札。その切り札を持ってさえいれば、つまり吸わせきるトイレを思い出せるようにさえなっていれば、どんな時も「大丈夫!」と言えることが、分かっていただけた思います。
いつも「大丈夫!」と言えること
さらに話を進め、あなたと一緒にもう一歩前進したいと思います。
前進する準備はいいですか?
おっけい! いつでもどうぞ。
目指したいのは、いつも「大丈夫!」と言えること、です。
いつも「大丈夫!」と言えるためには?
いつも「大丈夫!」と言える。
これを私は、次のようにイメージしています。
「もし今、断水したら、トイレどうする?」と、いつ訊かれても、
いつ訊かれても「大丈夫!」と即答できるって、どんな状態でしょう?
吸わせきるトイレの準備が万全、の状態だよね。
そう! 袋と「吸わせるもの」が備わってる状態です。
袋と「吸わせるもの」を備えよう
袋と「吸わせるもの」は、たとえば家に居たとすれば、よほどのことがない限り、身のまわりから探し出すことができるでしょう。だからこそ「思い出すだけでいい」と言いました。
ではもし、次のような場面ならどうでしょう?
- 断水が3日以上続いた
- 外出中に地震が起きて断水した
断水が3日以上続いた。当初見つけ出した袋と「吸わせるもの」は、すべて使い切った……。
外出中に地震が起きて断水した。袋と「吸わせるもの」が買えそうな店が、近くに見当たらない……。
「方法がわかっているので大丈夫!」だとはいえ、袋と「吸わせるもの」を探し出すのに時間がかかりそう。そんなことが容易に想像されます。
この「探し出すのに時間がかかる」というピンチを避ける方法は、探す必要がないように前もって備えておくこと。これだけです。袋と「吸わせるもの」が備わった状態、すなわち「準備は万全」の状態、を常に保つことで、いつでも自信をもって「大丈夫!」と即答できるのです。
「自信をもって」っていいね!
あれっ? でも「万全」って、どれだけ備えればいいんだ?
その疑問、いいですね!
袋と「吸わせるもの」は、どれだけ備えればいいの?
「どれだけ備えれば万全か?」
備えよう、と前に一歩踏み出すと自然に生まれる疑問です。あなたのその前進を、心から歓迎します。
おめでとうございます!
祝われた!
その疑問、ぜひ一緒に考えましょう。
何があっても大丈夫という「絶対的な万全」を目指したい。そう考える人もいるかもしれませんが、合理的とは言えず、非現実的になりがちで、勧めかねます。
「~しても」と具体的な未来を想定し、その未来に対する万全をはかるのが、合理的かつ現実的な考え方です。例として、先ほど挙げた「二つの場面」を使って考えてみましょう。
断水が3日以上続いても「大丈夫!」
断水が3日以上続いても「大丈夫!」と言えるために必要なのは、3日を超える日数分の備えです。
成人の1日の平均排尿回数は5~7回が正常値と言われています。余裕をみて、3日を超える日数を7日、1日の回数を7回として計算してみましょう。7回×7日で約50回。この50回分を「1人分の量」とみるわけです。これに家族の人数を掛け合わせた値が「どれだけ備えたらいいか?」の、答えのひとつと言えます。
今のはあくまでも計算「例」です。日数や回数、そして家族の人数を、あなたの想定と実状に合わせて、あなた自身で計算することをお勧めします。
外出中に地震が起きて断水しても「大丈夫!」
外出中に地震が起きて断水しても「大丈夫!」と言えるために必要なのは、数回分の袋と「吸わせるもの」を携帯していることでしょう。
これこそ、文字通りの「携帯トイレ」です。
もっと言えば「携帯用吸わせきるトイレ」とでも呼びたいところです。呼び方はともかく、カバンや財布、ポーチの中に、入れて常に携える。まさにお守りのような存在と言えます。
この携帯用吸わせきるトイレを、あなたとその場に居合わせる誰かの分として、2つ以上常に携えることをお勧めします。
チーム・トイレの自由が目指すところ
いつも、どんな時も「大丈夫!」と言えること。
それは「吸わせきれば、託せる」と思い出せることであり、吸わせきるトイレが災害トイレの「選択肢」になることであり、準備が万全であることです。
そのために必要なことを日々考え続けました。そして今も考え、試行錯誤をし続けています。
今日現在の答えとしての「最も必要なもの」は次の三つです。
- 「吸わせきるトイレ」の概念化
- その概念の普及
- 普及をより円滑にするための呼称
このサイトは、概念化された内容の説明とその普及のためだけに存在し、「吸わせきるトイレ」という呼称を全面的に使って、チーム・トイレの自由が運営しています。
いつも、どんな時も排せつに自由であること。すべての人が生きること。
これが、チーム・トイレの自由が目指すところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。